『酔いつぶれて介抱中』 01 : 【side-智也】

SILENT SPEECH様 : 『妄想必須!?20のシチュエーション』 より



週末の夜遅く、同中だったツレと飲みに行った清里がベロンベロンに酔っ払って帰ってきた。

と言っても清里の場合、酔っ払っても顔色や表情は普段と全く変わらない。今夜も一見しただけでは酔っているのか素面なのか判別がつかない状態であったが、玄関に座り込み大声で俺の名前を連呼し始めるという愚行に走ったところを見ると、相当酔っていたのだろう。

「近所メーワクだよ、さっさと上がって来い。」
「立てねえから呼んだんだろ。 智、肩貸して。」
「どんだけ飲んだんだよ・・・」
「いっぱい」
「潤も居たんだろ?止めてくれなかったのか?」
「潤と飲み比べた・・・」
「アホか!あの大酒呑みと競うなよ!」

清里がザルだとするなら、潤はワクだ。 人形みたいな上品な顔をしてるクセに、日本酒やらウィスキーやらバーボンやら (赤ワイン以外ならなんでもイケると言っていた) をラッパのみなどという呑んだくれのオヤジみたいなことをしてケロッとしているヤツだ。 とまあ潤の酒豪ぶりはどうでもいいが、とにかくそんなヤツと飲み比べるなどアホとしか言いようがない。

「あー酒くせぇ・・・」
「んー・・・、だから早く風呂場連れてって。」
「この状態で風呂はヤベぇだろ。もうちょっと冷めてからにしろよ・・・」
「シャワー浴びれば冷める。 食い物とかタバコの臭いが体に染み付いててヤなんだよ。
 そっちで気分悪くなりそうだ・・・」
 
というわけで清里に肩を貸して風呂場まで連れて行き、覚束ない手つきでタラタラと服を脱ぐ様子を見ていたのであるが。

「なに?洗ってくれんの?」

くだらない冗談を言ってきたので、アホは放っておいて先に寝ることにした。


しかし、俺が部屋に入って30分以上経っても清里が戻って来ない。少し心配になって風呂場に行ってみたら、ヤツは洗面台の下で寝ていた。

「おいキヨ、こんなトコで寝んなよ、風邪引くって!」

腕を思い切り引っ張ってみても、熟睡してしまっているのかちっとも起きる気配がない。
叩いても蹴飛ばして (酷ッ) も、ウンともスンとも言わない。

ちょ・・・、まさか急性アル中じゃねえだろうな・・・?
俺は急に不安になった。 以前、一緒に夜遊びをしていた友人が急性アルコール中毒をおこし、道端でブッ倒れたことがある。 あの時の友人は、真っ青になって呼吸が浅くなって、体温が低下したのかガタガタと震えていた。 でも今の清里の様子は、呼び掛けに応えないだけでこれといっておかしなところはない。 顔色は特に悪いワケじゃないし、呼吸も正常だし・・・。
大丈夫だよな? うん、大丈夫、大丈夫。 そう自分に言い聞かせてはみたが、動悸が妙に激しくなってきて全身がじっとりと汗ばんできた。しかもなんとなく息苦しい。


「キヨ、 きよさと・・・  おいキヨ、起きろよ、なあ」

微かに震えている自分の声が余計に不安を煽る。

もうどうしていいのかわからなくなって、ただ清里の身体を揺すりながら名前を呼び続けていたんだけど・・・



「揺らすな、アホ! 吐きそうになるっ!」

肩に掛けていた俺の手を払い、いきなり清里が怒鳴った。 目も開けずに。


「キヨ・・・?」

それから幾ら呼びかけてみても、再び清里から反応が返ってくることはなかった。 今のは恐らく寝言の延長だったのであろう。

通常ならブチ切れ必至、一週間の接触禁止を言い渡すか腹いせに鈴木の家に転がり込むぐらいはしてやりたくなる対応だ。 が、この時の俺は、安堵の方が大きくて腹を立てる気にもならなかった。

自然と詰めてしまっていた息をフウッと大きく吐いた途端全身から力が抜け、横たわる清里にヘナヘナとしなだれかかった。





(続く)





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