さよならを言うタイミング



数秒の沈黙の後の 『あのさ・・・』

それから、今話さなくてもいいような、どうでもいい話が続く。
人気のお笑い芸人の話とか、学校の先生の癖とか、そんなのならまだいい方。
近所の犬がさ・・・って、まあ、俺犬好きだからいいんだけどね。


「あのさ・・・」


はい、今日何回目かの『あのさ・・・』が出て参りました。 さあ、何を続けるつもりでしょうか?
いい加減、くだらないネタすらもなくなっただろ? そう考えちゃう俺って、かなり意地悪い。

わかっていながら黙っている俺。

だってさ、一生懸命話題探してる時のコイツの困った顔って、結構好きなんだもん。

だから、ブランコのチェーン部分を両手で握り締めて俯いているアイツの横顔を黙ってじっと見つめて一人ニヤついていたんだけど。


「なんか話して。」


うっ、そうきたか。  新手の攻撃(?)にちょっと焦った俺だった。


「ちょっと寒くなってきた・・・。」
「昼間はまだ暖かいのになあ。」
「もう7時なんだから寒くもなるよな。」
「そりゃそうだ・・・」


俺が『もう7時』の部分に力を込めたのは言うまでもない。

さて、その続きが言えるかどうか・・・

こうしてたらキリがないのはお互いわかってるんだけどな。
明日また会えるのもわかってるんだけどな。

なかなか言えないんだよな。  だって、言いたくないんだもんな。


「じゃあ、もう帰ろうか。」


ああ、今日はむこうが切り出した。 毎日毎日飽きずに繰り返されるちょっとしたせめぎ合い。


「そうだな。」


名残惜しい・・・とか、おくびにも見せずに、公園の出口に向かってサッサと歩き出す俺。
ああ、素っ気ないって思われたかな・・・・・・
アイツの足音がついて来なかったから、少しだけ不安になっていたんだけれど。

アイツが突然タタッと駆け寄ってきて、後ろから俺の腕を引っ張った。


「・・・何?」
「後で、電話する。」

「メールにしない?」
「いいけど・・・」


「だってさ、電話だと・・・また、切れなくなるし。
 切った後って・・・・・・ちょっと寂しくなるじゃん?   なんちって。」


最後の一言は余計だったかもしれないけど。 照れ隠しってことで・・・
アイツも嬉しそうにニヤついてることだし、まあ、いいだろう。










そんなガキっぽい遣り取りしながら毎日過ごしてたなぁ・・・なんて思い出してる今日この頃。

あれから数年経っても、相変わらず『さよなら』を言い出すタイミングが掴めてない俺たち。



「お前さ、今日もう終わり?」
「終わり〜♪ バイトもねえから帰ったら寝る〜。」
「じゃあさ、帰りに洗剤買ってって。できればまとめて何箱か。
 あ、ティッシュももうねえかも。 それと・・・」
「一人でそんなに持てねえよ! ティッシュはお前が買って帰って来い。」
「俺、この後まだ講義残ってるしバイトもラストまで入ってるし、店閉まるって。」
「今月の雑貨補填担当はお前なのにぃ〜〜っ!」
「ごめんて・・・」



でもいいんだ。 『さよなら』なんて言う必要ないから。 多分これからもそんな必要ないから。










シメが所帯染みた・・・





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