とまどい・・・の裏側

※短編『帰り道』の二人/『とまどい』の続きで、今回はマサキ視点のみの小話。


月曜日の朝。
先週の水曜日から風邪で休んでいたナオトに昇降口で会った。 金曜日に俺が見舞いに行った後風邪がぶり返したらしく、土・日をベッドで過ごす羽目になったらしい。(って、なんか俺の所為っぽくね!?)


「おはよ。具合どう?」

何かを含んだつもりはなかったんだが、ナオトは俺の顔をじっと見た後、ワザとらしく咳をしてみせた。

「けほ、・・・まだ咳がでるんだよね。」
「そっか。長引くな。」
「そうだね。」

言いながらクスクスと笑ってやがる。 ったく、明らさまな牽制だよな。 まあ、『全快したら覚えとけよ』 なんて言っちゃった俺が悪いんだけどさ。


「早く治んねえかなあー・・・」


思わず零した俺を横目で見てまた笑う。

「やーらし〜。」
「なんで? 風邪なんか早く治った方がいいじゃん。 他意はないよ?」
「ふ〜ん。 へぇ〜。」
「ナオが望むなら他意を含んであげてもいいけど。」
「望まねえ〜。ぜ〜んぜん望まね〜。」
「かっわいくねー。」
「べっつにぃ、カワイクなくて結構っスよ?」


こんな風に二人並んで歩いているのは傍から見れば以前と変わらない見慣れた光景。 でも実際は、以前よりほんのちょっとだけ際どくなったような気もする俺たちのジャレあい。(殆ど気の所為のような感じもするが)

避けられなくなっただけマシなのかもしれないけどさ、ここまで余裕持たれちゃうのも何となく癪に障るなあ〜とも思う。 てことで、教室に向かう途中を逸れて、階段脇の掃除用具などを放り込んである小部屋に引っ張り込んでみた。
少し前のナオトなら、この時点で既に動揺しまくりなのだが・・・。 ちょっと驚いてはいたようだけど、別段逃げようとはしていなかったし、掴んでいた俺の手を振り解こうともしなかった。

この反応は進歩なのか退歩なのか・・・。  明らかに(俺にとっては)退歩だよな〜。
信用してくれるのは嬉しいんだけど、ここまでアッサリ警戒全面解除されちゃうのもね・・・。 かなり複雑。



「なあ、ホントに全然望んでない?」


ナオトの両手を握りながら顔を近付けると、小首を傾げて少し考えるようなフリをして・・・


「・・・ちょっとは、嘘かも?」


なんてニッコリ微笑んで邪気なく答えてくれちゃった。 ヒトの気も知らないで。
それから俺の頬に軽く口付けた後、一人さっさと部屋を出て行った。


なんなんだよ、もう!
俺が 『待つ』 って宣言した途端そういうこと言っちゃうワケ?こういうことしちゃうワケ??
(で、そのまま俺を置き去り??)

ていうか、誰だよ、『嫌がることはしない』 なんて格好つけて言ったバカは・・・。 (間違いなく俺だ)



急いでナオトの後を追うと、教室手前で数人の女子に捕まっていた。

『風邪は治ったの?』 なんて、そんなの、登校してきたんだから態々訊かなくたってわかるだろ!?
自分棚上げで内心毒吐いてみたところで当然女子たちに伝わるはずもなく。

ナオもナオだよ。 俺の姿はとっくに視界に入ってるくせに、極上の笑顔で女と話しやがって。
ほんと、どういうつもりなんだか。


気を惹きたくてワザと女と喋ったり告られたことを言ってみたりしてた俺と同じことしようとしてるとか?
──── 今更そんな必要もないだろうに。

俺を妬かせたいとか??
──── 充分妬いてるからもうカンベンしてよ。

ああ、頼むから、その笑顔のまま教室に入っていかないでくれ。
これ以上他のヤツらに見せないで。


ソイツは俺のだ、・・・って、言えるものなら言ってしまいたい。


気を揉む俺を余所に、ナオトは声を掛けてきたクラスメイトたちに満面の笑みで応対していた。










この期に及んで勝手に一人ヤキモキ。 でも多分ナオトは無意識。





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