『清里と智也のクリスマス』 : 【side-智也】
清里のトラウマの所為ではないが、今年のイブやクリスマスは特別な予定も立てず家で二人のんびり過ごすはずだった。 昨日のイブはその通り、潤の愚痴を聞いただけで終わったし、クリスマス当日の今日は、夕方にツレたちが集まって騒いでる店にちょこっと顔を出してサッサと帰路に着いた。 一応イルミネーションを見ながら帰ろうということにはなったけど。
「ヒルズは?」
「そういうメジャーどころは混んでそうだからヤダ。」
「ちょうど通り道なのに・・・。 じゃあサザン・テラスは?」
「そこもメジャーじゃねえか。 わざわざ新宿で電車降りたくない。
てか、ここからじゃ乗り換えしなきゃなんねえじゃん。 ヤダヤダ。」
この時期、クリスマスのデコレーションが施されている場所など都内に山ほどあるだろうが、人の少ない所など皆無だろう。 てことで、清里の提案をことごとく却下した俺が最終的に連れてこられたのは家の近所のデカいスーパーの前。 店舗前の広い駐車場のど真ん中、5メートル程の高さのモミの木にこれでもかと派手な電飾がくっついていて、スーパー前にも関わらず、メジャーどころに引けをとらないくらい気合の入ったツリーだった。 家族連れが1組とカップルが2・3組居ただけで大した人混みもないし、穴場といえば穴場なんだろうが。
「結構頑張ってるな、このスーパー・・・。」
「だろ?」
その”頑張ってる感”が妙に空しいと言えなくもない。 いや、本当に綺麗だったし俺的に充分満足はしたんだけどさ。 隣に女が居たのなら、『キャー綺麗〜』だのなんだのの黄色い声が間違いなく聞こえてくるはずで。 態とらしい声を上げられるのも苛つくが、全く聞けないというのも寂しいといえば寂しい。 こういう場面で男二人というのがそもそも盛り上がりというか艶に欠けるような気はする。 それでついつい余計なことを口走ってしまったんだけど・・・。
「せっかくのツリーなのに、男二人で見てもなあ・・・。 しかも隣はお前だし。」
「悪かったな。」
溜息の後のムッとした声で、やっと自分が言ってしまったことのマズさに気付いた。
「ごめん・・・俺、今酷いこと言った。 ・・・怒ってる?」
「怒ってはいないよ。」
と言いつつも、明らかに声は刺々しい。 掴もうとした手もアッサリ躱された。 清里が俺に対してここまで露骨に不機嫌になるのも珍しくて、俺はかなり動揺した。
「でもさ・・・」
「怒ってはいないけど・・・、ああ言われるとやっぱりかなりヘコむんだよ。」
そりゃそうだろう。自分が言われたら、絶対キレてる。 それぐらい無神経な言い草だった。
「俺らは元々ゲイでもホモでもないんだし、
こういう時にお前が女と過ごしたいって思うのも仕方がないのかもしれないけど・・・」
「違うよ、女と過ごしたいなんて思ってないよ!」
「でも俺とじゃ不満なんだろ?」
「そうじゃないよ・・・、さっきのは俺の馬鹿な冗談で・・・本気で思ってるわけじゃなくて・・・」
今までイベントの際には傍に必ず女が居たしそれが当たり前のように思っていたから確かに男二人だと妙な感じはする。 だからと言って女と居たくなったワケではないし、キヨと過ごすのが不満なワケじゃない。 キヨが傍に居ないコトの方がよっぽど不満に決まってる。 口篭らずにちゃんとそれを伝えなきゃダメだと思うのに、焦るだけで言葉が続かなかった。
「もう帰ろうか。 人も増えてきたし。」
「え・・・と、もうちょっと・・・居ようよ。 せっかく来たんだし。ツリー綺麗だし・・・。」
「寒くないか?」
「平気だよ・・・。」
普段の口調に戻してくれていたし俺の身体を気遣うのもいつも通りだけれど、顔は俺から背けられたままだった。
クリスマスに喧嘩って・・・。他のヤツと過ごした時のことなんかどうでもいいけど、俺と過ごした時のことまでトラウマに分類されたら絶対イヤだ(って、俺が悪いんじゃねえか!)。
「キヨ・・・」
「ん?」
「さっきはゴメン。 ほんとに俺、女と過ごしたいなんて全然思ってないし・・・」
「・・・うん?」
「いつもお前が傍に居るのが当たり前で、普段はあんまり意識しないけど
やっぱり特別な時は、・・・てか、特別じゃない時でも、キヨが傍に居ないと嫌だよ。」
俺にしては頑張って言葉を捻り出してみたものの、普段の心掛けが悪い所為か頑張ってこの程度だった。
ダメだ俺。 女で培った経験をどうしてこういう大事な時に大事な相手に活かせないかな・・・。
結構本気でヘコんでたんだけど。 そこはさすがキヨ。俺には逆立ちしても吐けない台詞がサラッと返ってきた。
「俺はいつだって智と一緒に居たいと思ってるよ。 他の誰かじゃもう駄目だ。」
「・・・うん」
「こっ恥ずかしいこと言うなって怒んないの?」
「ク、クリスマスだし・・・、ちょっとくらい甘めなこと言われてもいいかなあって・・・」
「ふぅん。 ほんとに反省してるんだ?」
「してます。」
「じゃあ、これぐらいもいい? 人目、気になる?」
清里が両手で俺の頬をそっと包んで顔を覗き込んだ。 火照っていた頬に、清里の手がひんやりと冷たくて気持ちいい。 よかった。ちゃんと機嫌直ってる。
「きっと、皆ツリー見てるし。 カップルは自分たちの世界作ってるし・・・
誰も俺らなんか気にしてねえし・・・」
ま、すぐ傍に居た数人は俺たちを物珍しそうに見てたけど。 ・・・もうどうでもいいや。
「俺、女ともこんなことしたことない。」
「俺もねえよ。」
「意外と緊張する。」
「・・・するね。」
今年のクリスマスは、派手にデコレーションされたツリーの下でキスとか、思いっ切りベタなことをしてしまった。
+++ end +++
遊んではいたが、意外にベタなことはしたことないよという二人でした。
この後は、計画通り(?)ノンビリ過ごすんでしょう。
遊んではいたが、意外にベタなことはしたことないよという二人でした。
この後は、計画通り(?)ノンビリ過ごすんでしょう。
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