続・味見してみる? 09



今までは、俺が夜中にバイトして八神さんも時間が不規則な生活をしていたから朝方から昼まで一緒に過ごすなんてことが出来ていた。 これで俺が昼間に活動する普通の生活に戻ったとしたら・・・

未だにお互いの連絡先も知らないような状態で、そして今更訊けるようなノリでもない。
『もう部屋に行けなくなる』 = 『もう会えなくなる』 だということは八神さんにもわかっているはずで。


『応援してるよ』

あの時、八神さんは些かの驚きも動揺も見せず、いつもと変わらぬ調子で優しく俺の髪を撫でた。
何故?とか、これからどうするの?とか、そういう突っ込んだ質問もナシ。

思い切って投げ掛けたのに、ちゃんと受け取って貰えなかった。



「自覚した途端フラれちゃったなぁ・・・」

自分に言い聞かせるように、未だに実感の湧いてきていない事実を口に出してみる。

八神さんにとって俺は最初からそういう対象じゃなかったことはハッキリした。 しかし、勘違いをした俺がマヌケかと言うと、強ちそうとも言い切れないと思う。 あんな時間を過ごせば誰だって勘違いするに決まってる。 そりゃ男同士ではあるけれど。

・・・ったく、落ち込めばいいのか腹立てればいいのかよくわかんねえ。


はぁ〜・・・



「小杉ぃー、今日は随分幸せ逃がしてるなー。」

この日何十回目かの溜息を吐きながらタバコの補填をしていた俺の傍らで相方が苦笑いをした。 人間、図星を指されるとどうしてこんなにムカつくんだろう? 目線だけをそちらに向け、今の俺にその辺突っ込むんじゃねえよの空気を醸し出してみたけれど、軽く受け流された。

「小杉さぁ、4月でココ辞めるってほんと?」

因みにその辺もあまり突っ込まれたくないのだが・・・

「うーん・・・、多分・・・辞める、と思う。」
「でも、時間変えるとか減らしてでも残ってくれって店長には言われてるんだろ?」
「そうなんだけど、課題とかが結構大変な学校らしくてさ、バイトしてるヒマないかもって感じなんだ。」

それに八神さんとのこともあるしな・・・。
店で滅多に会うこともなくなるだろうけど、ココに残ってたらいつまでも引き摺ってしまいそうなんだよな。
僅かな可能性に期待して、来ない人を延々待ち続ける、とか??  おいおい、それじゃ演歌じゃん。

「俺としては・・・、できれば残って貰いたいなぁ・・・と」

「はは、時間変えたら一緒に働くことなくなるだろ?」
「そうだけどさ、同じ店でバイトしてるってことでだな、なんとなく繋がっているというかだな・・・」

俺からフイっと目を逸らしてボソボソと呟いた。

「気色悪いこと言うなよ〜〜っ」

この男の言葉が 『気の合うバイト仲間だから』 的意味でないことぐらい俺にもわかる。 けど、それを受け止めてしまうワケにはいかないんだ。 含められた意味に気付いてないフリをして軽口を返した。

ほんとは俺も他人のこと気色悪いなんて言えないんだけどな。 昨日のことは夢でした〜とか今まで通りにならないかな〜とか都合のいいこと考えてるしな。 まったくもって未練がましい。

「気色悪いとか言うなよ、ひでーな・・・」

渋い顔はしていたが、しつこく食い下がることもせず (食い下がられちゃ困るんだけど) 相方はレジを出て行った。



俺がバイトを辞めるにしてもシフトを変更するにしてもまだ間がある。肉まんも今日明日中に販売終了するワケじゃない。まだ暫く八神さんと顔を会わせる日は続くだろうけど・・・ これからなるべく部屋には行かないようにしてさ、そうそう、 『もう迎えに来ないで下さい』 ってキッパリ言ってさ、あのヒトがいない生活に慣れていけばいい。 そもそも少し前まではそれが普通だったんだからさ、元の状態に戻すのなんて簡単なことだよ!

残されたレジ内で一人固く決意してみたが・・・・・・

いざ当の本人を目の前にすると、途端にぐらつきそうになるから始末が悪い。 『いらっしゃいませ』 も言わず、俺は慌てて八神さんから視線を逸らした。


「外から見えてたんだけど、さっき口説かれてたでしょ?」

少し離れた所で商品のフェイスアップをしている相方の背を見ながら、まるで責めるような言い方。

「口説かれてませんっ」
「でも怪しげな雰囲気だったよ?」
「違いますっ」

「ああ、そう。 違うんならいいけどね。」

つーか、俺がバイト仲間に口説かれようがナンだろうがもうアンタに関係ないじゃん! 振った相手に思わせぶりなこと言うなっつうの! 危うくブチ切れそうになったが、ムッとしている俺を尻目に、八神さんはアッサリと話題を変えた。

「明日休みだったよね?」
「そうですけど」

「じゃあ、今日はパーっとお祝いしようね?」
「・・・お祝いって、なんの?」

もしかして俺の失恋祝い? はは、失恋した相手にお祝いされちゃうの、俺? 自虐的なことがふと頭に浮かんで今度は果てしなく気分が減り込む。

「モチロン、小杉君の門出祝い♪」

ていうか、昨日の今日でこっちは気まずさMAXなのに、このヒトはそんなこと微塵も感じてないのか??

「門出って・・・もうちょっと先の話ですよ・・・?」
「今日さ、偶然知人からシャンパン貰ったんだよね。 丁度いい機会だからそれ飲もうよ、ね?」

「でも・・・」

なるべく部屋には行かないようにしようってさっき決意したばっかりなんだよ・・・
それより、俺は今かなりムカついてたはずなんだ、けど・・・
『行かない』 の一言が中々口から出てこない。 ああ、どうしてこう意志薄弱なんだ俺は・・・


「ビール・・・買わないんですか」

何も置かれていないレジ台を見つめながら、どうにか話を逸らそうとしてみたが。

「買わないよ。」
「肉まんは ──・・・」
「何も買わない。 俺は今日、君を誘う為だけにココに寄った。 この後、迎えに来るつもりもない。」



「でも部屋で待ってるから、必ず来て。 わかった?」

珍しく高圧的な口調に驚いて顔を上げると、八神さんが真顔で俺を見下ろしていた。





(続く)
演歌だな〜、小杉。
さて、いよいよ八神が動く・・・のか?




アンケート、ご協力ありがとうございます♪
今日の夜まで貼り付けておきますが、かなり差がついてるので
このまま決定の可能性大です。

ご協力ありがとうございました! ^∀^ 





back味見してみる? TOPnext

まあよかったよ、と言う方は
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
ポチッと押してやって下さい♪




  1. コメント:3