続・味見してみる? 13
アレ? 甘くならなかった・・・・・・
ああ重い。 ありえないくらい身体が重い。
俺はさっきから、首まで嵩のある生ヌルい泥水の中を前進しようと必死で藻掻いているのだが、濡れた衣服が身体を拘束するように絡み付いて思うように手足が動かない。
つーか、なんで俺はこんな泥水の中でジタバタしてるんだよ。この時間は大体フッカフカの布団の中でヌクヌクと安眠してるはずなんだよ (あ、俺ん家の布団はペラペラだけどね)。
あーもう、動くの止めちゃおうかな。一応温かいし、頑張ってもちっとも進まねえし。てか、そもそもこんな状況になってる理由がわかんねーし・・・と、手足を止めようとした瞬間、周囲に満ちていた泥水が消えた。
寒っ!
肌を撫でた冷気に驚き身体を丸めようとして、妙な部分に鈍い痛みが走り、俺は思いっきり現実に引き戻された。
そう、今まで俺の身体にベッタリと纏わりついていた ”悪夢の原因” が、ちょうどベッド端に腰を下ろして肩越しにこちらを振り返ったところだった。 ったく、ちょっーと布団が捲れただけでも寒いんですよ、この時期はっ。
「ごめん、起こしたか?」
「・・・・・・・・・。」
(寝起きでボケているワケではない。 声を出したくないだけである。)
「まだ寝てなさいね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
(話せないワケではない。 話したくないだけである。)
シャツを軽く羽織った八神さんは、眉間に深い皺を寄せて布団から目だけを覗かせている俺の額に小さいキスを落とした。 そんな優しいフリしたって騙されないぞ、人非人め・・・
モトを正せば 『キスで中途半端に煽って放っておくな』 と自分が言い出してこういう結果になったワケだが、それはチャッカリ棚に上げ、痛みを与えた八神さんだけが今の俺の中では悪者。
「そんなに睨まないでよ、挫けるじゃない・・・」
困ったように、済まなそ〜に眉を下げているが俺は騙されない。
あんな顔してっ、あんな顔してっっ、どうせこれっぽっちも済まないなんて思ってないんだから!!
「機嫌直してよ」
「・・・・・・・・・・・・。」
「初めてセックスした直後に険悪なのってヤダよ」
「セッ・・・ だっ、 誰の所為でッ・・・ あ゛あ゛ーーーもう、向こう行ってよっ!!」
案の定俺の要求はアッサリ無視し、被りかけた上掛けをガシっと掴んで目の前に顔を差し出してくる。 そのくせまだ神妙にこっちの機嫌を伺うフリをしているのが癇に障ること甚だしい・・・が
「痛かった?」
「当たり前だっ!!」
「痛かっただけ?」
と訊かれるとこちらも返事に窮してしまう (ほら、俺素直だからさ)。 数時間前の記憶を改めてプレイバックしてみるまでもない。 『鬼ー!』 だの 『悪魔ーー!!』 だのの罵声が、途中から別のモノ (嬌声とも言う) に変わっていたのは打ち消したくても打ち消せない事実で・・・
「動けない?」
「・・・・・・ことも・・ない・・・」
「一応身体のことを考えて休前日を選んだんだけどな」
なっ、なんだよ、その 『気遣ってやったんだから感謝しろよ?』 みたいな言い方はっ!
ああそうでしょうとも、充分気遣ってくださったんでしょうよ。 妙な場所を酷使され、精も魂も尽き果てさせられて本来身動きすらままならないはずの俺が起き上がれないほどのダメージまで受けていないのは、意地悪で恐ろしかった言葉に反してこのヒトの所作が丁寧だったから、そして上手かったから (そこがまたヒジョーにムカつく)。
俺が何も言い返せないとわかると、気遣わし気な顔が途端にしたり顔に変わった。
チッ、やっぱり心配そうなのはフリだけだ。 つーか、”選んだ” ってなに!?!?
「・・・今日が休みじゃなかったらしなかったってことかよ・・・」
「ま、ね」
「しっ・・・・・・仕向けたな・・・」
「否定はしない」
にゃろ〜〜、いけしゃあしゃあと・・・
高級シャンパンなんか持ち出してっ、門出を祝うとかなんとか調子のイイこと言ってっ、まるっきり計画的犯行(?)じゃんかっっ!! にゃろ〜っ、まんまと引っ掛かっちゃったじゃねーかっ! にゃろ〜〜っっ(怒)
「この腹黒エロおやじっ!」
「計画性のある色男と言ってくれ」
あはっ、モノは言いようだねッ♪ じゃねえーーーよっ!!
不貞腐れて八神さんに背を向けたら、彼がまた布団の中に戻ってきて俺の身体に腕を廻した。
そのまま放っておくとまたヘンな流れに持っていかれそうな気配がアリアリだったので (さりげなく腹を撫で上げないでください!)、怪しい空気にならぬよう (だからうなじに吸い付くの止めてくださいって!)極力冷たい声音を作って話題を変えたのだが。
「・・・・・・シャンパンくれたヒトってさ・・・、ホントにただの知り合い?」
「気になる?」
当たり前だろ、そりゃ。
憮然としている俺の耳をはむはむしながら、八神さんはまたまた信じられないような台詞をシレっと吐いた。
「気にしなくていいよ、あれウソだから」
「・・・は?」
「そんなタイミングよくドンペリなんて貰えるワケないだろ。」
・・・・・・・・・・・・。
「何軒か探したんだけど店頭でラベイは見つからなくてさ〜、ごめんな、ロゼで」
いや、だから、問題はソコじゃないし・・・・・・
なんかもう・・・根本的なところから認識が間違っている気がするんですけど。 ええ、勿論俺の認識が。
「俺が・・・ 『部屋に来れなくなる』 なんて言わなかったら、こうはならなかった・・・?」
「いや、なんとかしたよ。
ま、『門出祝い』 は確かにいい口実になったけどね。 確実なネタじゃないと君動いてくれないから。」
「・・・まさか
最初に俺を部屋に呼んだ時から俺をどうにかしようと考えてた・・・・・・とか?」
「自分に置き換えて考えてごらん。 君は下心ナシで女の子を部屋に上げるか?キスまでしてる子を??」
・・・・・・ごもっとも、 です。 ごもっとも過ぎて返す言葉もない・・・けど何か言い返さないと気が済まない。
悪足掻き?負け惜しみ?もうなんでもいいや。 どうせ苦し(悔し?)紛れの俺の厭味なんかこのヒトは痛くも痒くもないんだろうから(泣)
「話したいだけって・・・ヘンなコトする気はないって、あれだけ言ってたクセに・・・」
「襲うよって宣言しておくマヌケはいないだろ?」
「はめられた・・・」
「しみじみ言うなよ」
「迂闊だった・・・」
「そうでもないよ」
「はめた本人が言うな」
「あのねぇ・・・」
一向に態度を軟化させない俺に焦れたのか、面倒くさくなったのか、はたまた路線変更することにしたのか、八神さんは大きな溜息を吐いてむくりと起き上がり、今度は俺に覆い被さるように両手をついた。
「おとなしく眺めてるだけにしようと思ってたんだよ、最初は」
「どこがおとなしく、だ・・・」
「毎日店に通うだけにしてただろ?
何ヶ月も 純朴青年 のように 控え目 に 忍耐強く 君を 見守ってた 俺を評価してよ。」
ふっ。 ツッコミどころが多過ぎて逆に突っ込めないって正にこのことだよ。
てゆーか、何ヶ月・・・も?? おいおい俺がバイトに入ってすぐからってことかい。 ソレ、控え目に見守ってた、じゃなくて軽くストーカーだよ。 恐いよ。
「自分で言っててサムくない?」
「かなりサムい」
「・・・・・・決定打は?」
「ピザまんの味見」
・・・・・・はぁ、、、
もし俺があの日の朝、偶然八神さんに会わなかったら ────・・・
愛想良く会話なんかしなかったら ────・・・ ってことかぁ。
こうなってみて初めて自分のボケ加減を実感するよ。 俺、救いようがない。
ということで、まあ、あんな偶然がなかったとしても、遅かれ早かれこのヒトの思う通りにされていたんだろうけどな。 ・・・と思ってやることにする。
あの時はもう、俺もこのヒトのことが気になって気になって仕方なかったしな。
毎晩このヒトが店に来るのを心待ちにしちゃってたしな。
「頼むよ・・・、機嫌直してくれ」
なんとなく声音が弱々しくなったので、モソモソと身体を反転させて八神さんを見上げた。
どうせこの哀願も演技だろうけど・・・・・・ らしくなくカワイイから許す。
「オレは返品不可だからね!」
尖らせた俺の唇に軽くキスをして、俺の大好きな超絶格好良い顔で八神さんは笑った。
「するわけない。 俺を信じろ 」
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まあよかったよ、と言う方は

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ああ重い。 ありえないくらい身体が重い。
俺はさっきから、首まで嵩のある生ヌルい泥水の中を前進しようと必死で藻掻いているのだが、濡れた衣服が身体を拘束するように絡み付いて思うように手足が動かない。
つーか、なんで俺はこんな泥水の中でジタバタしてるんだよ。この時間は大体フッカフカの布団の中でヌクヌクと安眠してるはずなんだよ (あ、俺ん家の布団はペラペラだけどね)。
あーもう、動くの止めちゃおうかな。一応温かいし、頑張ってもちっとも進まねえし。てか、そもそもこんな状況になってる理由がわかんねーし・・・と、手足を止めようとした瞬間、周囲に満ちていた泥水が消えた。
寒っ!
肌を撫でた冷気に驚き身体を丸めようとして、妙な部分に鈍い痛みが走り、俺は思いっきり現実に引き戻された。
そう、今まで俺の身体にベッタリと纏わりついていた ”悪夢の原因” が、ちょうどベッド端に腰を下ろして肩越しにこちらを振り返ったところだった。 ったく、ちょっーと布団が捲れただけでも寒いんですよ、この時期はっ。
「ごめん、起こしたか?」
「・・・・・・・・・。」
(寝起きでボケているワケではない。 声を出したくないだけである。)
「まだ寝てなさいね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
(話せないワケではない。 話したくないだけである。)
シャツを軽く羽織った八神さんは、眉間に深い皺を寄せて布団から目だけを覗かせている俺の額に小さいキスを落とした。 そんな優しいフリしたって騙されないぞ、人非人め・・・
モトを正せば 『キスで中途半端に煽って放っておくな』 と自分が言い出してこういう結果になったワケだが、それはチャッカリ棚に上げ、痛みを与えた八神さんだけが今の俺の中では悪者。
「そんなに睨まないでよ、挫けるじゃない・・・」
困ったように、済まなそ〜に眉を下げているが俺は騙されない。
あんな顔してっ、あんな顔してっっ、どうせこれっぽっちも済まないなんて思ってないんだから!!
「機嫌直してよ」
「・・・・・・・・・・・・。」
「初めてセックスした直後に険悪なのってヤダよ」
「セッ・・・ だっ、 誰の所為でッ・・・ あ゛あ゛ーーーもう、向こう行ってよっ!!」
案の定俺の要求はアッサリ無視し、被りかけた上掛けをガシっと掴んで目の前に顔を差し出してくる。 そのくせまだ神妙にこっちの機嫌を伺うフリをしているのが癇に障ること甚だしい・・・が
「痛かった?」
「当たり前だっ!!」
「痛かっただけ?」
と訊かれるとこちらも返事に窮してしまう (ほら、俺素直だからさ)。 数時間前の記憶を改めてプレイバックしてみるまでもない。 『鬼ー!』 だの 『悪魔ーー!!』 だのの罵声が、途中から別のモノ (嬌声とも言う) に変わっていたのは打ち消したくても打ち消せない事実で・・・
「動けない?」
「・・・・・・ことも・・ない・・・」
「一応身体のことを考えて休前日を選んだんだけどな」
なっ、なんだよ、その 『気遣ってやったんだから感謝しろよ?』 みたいな言い方はっ!
ああそうでしょうとも、充分気遣ってくださったんでしょうよ。 妙な場所を酷使され、精も魂も尽き果てさせられて本来身動きすらままならないはずの俺が起き上がれないほどのダメージまで受けていないのは、意地悪で恐ろしかった言葉に反してこのヒトの所作が丁寧だったから、そして上手かったから (そこがまたヒジョーにムカつく)。
俺が何も言い返せないとわかると、気遣わし気な顔が途端にしたり顔に変わった。
チッ、やっぱり心配そうなのはフリだけだ。 つーか、”選んだ” ってなに!?!?
「・・・今日が休みじゃなかったらしなかったってことかよ・・・」
「ま、ね」
「しっ・・・・・・仕向けたな・・・」
「否定はしない」
にゃろ〜〜、いけしゃあしゃあと・・・
高級シャンパンなんか持ち出してっ、門出を祝うとかなんとか調子のイイこと言ってっ、まるっきり計画的犯行(?)じゃんかっっ!! にゃろ〜っ、まんまと引っ掛かっちゃったじゃねーかっ! にゃろ〜〜っっ(怒)
「この腹黒エロおやじっ!」
「計画性のある色男と言ってくれ」
あはっ、モノは言いようだねッ♪ じゃねえーーーよっ!!
不貞腐れて八神さんに背を向けたら、彼がまた布団の中に戻ってきて俺の身体に腕を廻した。
そのまま放っておくとまたヘンな流れに持っていかれそうな気配がアリアリだったので (さりげなく腹を撫で上げないでください!)、怪しい空気にならぬよう (だからうなじに吸い付くの止めてくださいって!)極力冷たい声音を作って話題を変えたのだが。
「・・・・・・シャンパンくれたヒトってさ・・・、ホントにただの知り合い?」
「気になる?」
当たり前だろ、そりゃ。
憮然としている俺の耳をはむはむしながら、八神さんはまたまた信じられないような台詞をシレっと吐いた。
「気にしなくていいよ、あれウソだから」
「・・・は?」
「そんなタイミングよくドンペリなんて貰えるワケないだろ。」
・・・・・・・・・・・・。
「何軒か探したんだけど店頭でラベイは見つからなくてさ〜、ごめんな、ロゼで」
いや、だから、問題はソコじゃないし・・・・・・
なんかもう・・・根本的なところから認識が間違っている気がするんですけど。 ええ、勿論俺の認識が。
「俺が・・・ 『部屋に来れなくなる』 なんて言わなかったら、こうはならなかった・・・?」
「いや、なんとかしたよ。
ま、『門出祝い』 は確かにいい口実になったけどね。 確実なネタじゃないと君動いてくれないから。」
「・・・まさか
最初に俺を部屋に呼んだ時から俺をどうにかしようと考えてた・・・・・・とか?」
「自分に置き換えて考えてごらん。 君は下心ナシで女の子を部屋に上げるか?キスまでしてる子を??」
・・・・・・ごもっとも、 です。 ごもっとも過ぎて返す言葉もない・・・けど何か言い返さないと気が済まない。
悪足掻き?負け惜しみ?もうなんでもいいや。 どうせ苦し(悔し?)紛れの俺の厭味なんかこのヒトは痛くも痒くもないんだろうから(泣)
「話したいだけって・・・ヘンなコトする気はないって、あれだけ言ってたクセに・・・」
「襲うよって宣言しておくマヌケはいないだろ?」
「はめられた・・・」
「しみじみ言うなよ」
「迂闊だった・・・」
「そうでもないよ」
「はめた本人が言うな」
「あのねぇ・・・」
一向に態度を軟化させない俺に焦れたのか、面倒くさくなったのか、はたまた路線変更することにしたのか、八神さんは大きな溜息を吐いてむくりと起き上がり、今度は俺に覆い被さるように両手をついた。
「おとなしく眺めてるだけにしようと思ってたんだよ、最初は」
「どこがおとなしく、だ・・・」
「毎日店に通うだけにしてただろ?
何ヶ月も 純朴青年 のように 控え目 に 忍耐強く 君を 見守ってた 俺を評価してよ。」
ふっ。 ツッコミどころが多過ぎて逆に突っ込めないって正にこのことだよ。
てゆーか、何ヶ月・・・も?? おいおい俺がバイトに入ってすぐからってことかい。 ソレ、控え目に見守ってた、じゃなくて軽くストーカーだよ。 恐いよ。
「自分で言っててサムくない?」
「かなりサムい」
「・・・・・・決定打は?」
「ピザまんの味見」
・・・・・・はぁ、、、
もし俺があの日の朝、偶然八神さんに会わなかったら ────・・・
愛想良く会話なんかしなかったら ────・・・ ってことかぁ。
こうなってみて初めて自分のボケ加減を実感するよ。 俺、救いようがない。
ということで、まあ、あんな偶然がなかったとしても、遅かれ早かれこのヒトの思う通りにされていたんだろうけどな。 ・・・と思ってやることにする。
あの時はもう、俺もこのヒトのことが気になって気になって仕方なかったしな。
毎晩このヒトが店に来るのを心待ちにしちゃってたしな。
「頼むよ・・・、機嫌直してくれ」
なんとなく声音が弱々しくなったので、モソモソと身体を反転させて八神さんを見上げた。
どうせこの哀願も演技だろうけど・・・・・・ らしくなくカワイイから許す。
「オレは返品不可だからね!」
尖らせた俺の唇に軽くキスをして、俺の大好きな超絶格好良い顔で八神さんは笑った。
「するわけない。 俺を信じろ 」
(続く)
次回やっと最終回〜。
補足的な短い話になります。
次回やっと最終回〜。
補足的な短い話になります。
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