続・味見してみる? 14 (補足的最終話)



またまた、深夜1時のコンビニ。   (何度目だよ、この出だし・・・)


昨日の昼間は5月上旬並の陽気だったとニュースで言っていた。確かに夜になった今でも昼間の暖かさが残っていて、熱々系の食い物や飲み物の出足が悪い。 ま、だからナンだって話ですけどね。 暑かろうが寒かろうが店内の顔ぶれは今夜も代わり映えナシだし、隣のレジの相方も相変わらずだ。何も変わらない。通常通り。
そうそう、例えこの俺が─・・・、20年間 ノーマル 且つ平凡に生きてきたこの俺が、男に喰われたなんて衝撃ハプニングを体験しようがなんだろうが世の中に劇的な変化などありはしないのだ。



「おい小杉、そろそろじゃね?」

相方がチラリと壁掛け時計を見た。 ワザワザ教えて貰わなくてもわかっているが、一応スッ呆けてみる。

「あぁ? なにが?」
「ホラ、肉まんシャチョーがそろそろ来るんじゃねえのかなって。」

肉まんシャチョー?? 頼むから妙なネーミングしないでくれ。 マシュマロマン (古ッ) かビバンダム (ミシュランマン) を想像しちゃうじゃないか。 あのヒト一応男前なんだぞ!

「だからなんだよ、俺にはカンケーねえし。」
「おや〜?素っ気無いじゃないですか、ケンカでもしたんですかぁ〜?」
「してねえよ」

てか、なんでコイツが俺と八神さんのこと知ってんだよ・・・。

そういえば、最近あのヒトは俺のレジに客がいる時を狙って相方のレジに行く。 きっと・・・、いや絶対、人好きのする笑顔を浮かべて、それとわからないぐらいの厭味を交えて釘を刺しているに違いない。
まったくもう! やることが意外とコドモなんだから、あのヒトはっ。 休みの前の日の夜中だけここのバイトを入れることにしたって伝えたら、無言で思いっっっきり顔顰めてたしな〜・・・。


「まあ、別れたらいつでも俺のトコに戻って来いよ?俺は待ってるから。」

ん? ・・・・・・はい?

いつの間にか相方が、余所に思考が飛んでボケッとしていた俺の左手をアホなことを訴えながら握り締めていた。 ちょっと待て。戻って来いって、俺がいつお前のトコにいたんだよ。 異議+不満を露骨に顔に貼り付けて手を払おうとしたが、ヤツは思いの外強く俺の手を握り締めていて一向に離そうとしない。
おいおい、こんなトコロを見られたら・・・  俄かに焦り始めた俺にも構わず、相方は一人妄想ワールドに突入しかけている。 間が悪いというのか・・・、それはちょうど八神さんが店に入ってきた時で。
俺には全く視線を寄越さずに、相方に満面の笑みを贈りながらゆっくりと飲料コーナーに向かうのが恐すぎる。 それに気付いた相方が、バツの悪そうな顔をして飲料コーナーから一番遠い商品棚の整理をしに行った。 ああ・・・、この微妙な空気の中に残される俺の身になってくれないものだろうか!?



「なんで来んの・・・」
「やっぱり一日一回監視に来ないと心配だし?」

心配だし?じゃないよ、もう。 成人した男が深夜のコンビニでバイトしてるだけじゃん、何があるっていうの。 ああ、コンビニ強盗とか?そりゃ恐いわ。

「八神さん、アイツに余計なこと言ったでしょ・・・」
「必要なことしか言ってないよ。」
「だからなんですか、その必要なことって・・・」

「ふふ、まあ、いろいろ。
 男に口説かれても全く気付かないまま喰われちゃうような天然な子を恋人に持つと苦労するよね。」

それ俺か? 俺のことか??
世界中のどの人にそれを言われても仕方ないと思えるけどこの人だけには絶対言われたくないと思う俺は勝手なのか? ───・・・ 否。 喰った張本人が言う台詞じゃねえだろ、それ!


「肉まんは?」

レジ台に置かれたビールのバーコードを読み取り、そっぽを向いて厭味満載の確認。

「・・・意地悪いな、小杉君。」

そりゃ、意地悪も言いたくなるってもんだ。 だってさ、だってさ、このヒト俺に向かってさ、 『当分肉まんは喰いたくない』 なんて言ったんだよ? 『飽きた』 って言ったんだよ!?それ聞いた時は本気で泣きたくなったよ!

「八神さんほどじゃないです。」
「ふっ。 俺は意地悪いんじゃなくて腹黒いんだ。」

「わかってんなら直して下さい!」

「はは。 じゃ、部屋で待ってるからね。」
「・・・・・っ!」

涼しい顔してお釣りを受け取りながら、俺の手の平を指先でスルッと撫でた。
つーか、そのエロさをまず直して!お願いだから!

しかし、俺の非難の睨みなど何処吹く風〜な彼のその不敵な笑顔にすら反応して賑やかになる己の心臓が恨めしい・・・  多分、真っ赤だ、俺。

ほんと、どんだけこのヒトに惚れちゃってんの、って話ですよ・・・




「ああ」

入口の扉の手前で思い出したように呟き、くるりと踵を返して八神さんが俺の目の前に戻ってきた。

「な・・・なんすか」

「今日は一緒に風呂に入ろうね。」
「・・・は? や・・・、ひとりで・・はいりた ──・・・」
「頭の天辺から足の爪先まで全身隈なくキレーーに洗ってあげる。俺が。」

「・・・・・・じぶんで・・・洗えます・・ケド

後退りしかけたところで手首をガシッと掴まれ、レジ台越しに凄い力で引っ張られて思わずよろけた。
相変わらず彼の顔には笑みが貼り付いているが、目が全然笑っていない。 見た目はともかく、気迫はコンビニ強盗並だ (遭ったことないけど)。

うう・・・、怒ってる。 やっぱり怒ってるよ。すんごい怒ってるよ〜〜・・・


「ったく、大人しく手なんか握られてるんじゃないよ。」


すんげ〜〜恐い、んだけど・・・

頬がくっつくぐらいに顔を寄せられて更にぐーんと心拍数は上がった。 耳に息を吹き込むように低い声で囁かれて、こんな状況にも拘わらず (レジ内だし、防犯カメラで撮られちゃってるし、店内にはまだ客もいて、おまけに俺は怒られているのに、だ) 背中がぞくっとしちゃうとか妬かれて嬉しいとか思っちゃうとか・・・


「バスキューブは何がいい?」
「シ・・・シトラスで・・お願いします・・・」

「わかった」


掴んでいた俺の左手の甲にチュッと軽く口付け、
店内を振り返り、固唾を呑んでこちらを見守っていた (らしい) 客+相方に最上級の笑顔を贈り・・・・・・、

外面紳士、実は超腹黒エロオヤジ (あとヘンタイ・ドSもつけたい) な俺の彼氏は ───・・・

今夜も自分が飲まないビールを買って (見た目だけ) 爽やかに帰って行った。










+++ end +++
完結〜♪ 頑張れ小杉〜♪
このあと八神視点で数話続きます。 そちらもお付き合い頂ければ幸いです。 《染》

※おまけ文は下方の 『続きを読んじゃう!?』 からどうぞ。
(かなりくだらないですけど)





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