続・味見してみる? 01



「あー、だからね、それをパーム対応にしたいんだって。」

温かい布団に包まれて数時間後、 『そろそろ起きようか・・・、でもこの快適空間から出たくない〜・・・』 のせめぎ合いが脳内で始まる頃、隣で寝ていた人物の低くて柔らかい声が耳に流れ込んできて目が覚めた。
薄っすらと目を開けた俺に気付き、 『起こしてごめんね』 の意を込めた軽いキスが唇に落とされる。

一般的な恋人同士の朝の風景・・・・・・





じゃねえよ。 誰と誰が恋人だ (苛)


「そうそう、PCじゃ場所をとるからパームで処理できるように。
 そんなに複雑なプログラムは組まなくて済むと思うよ、数値変換させるだけのシステムだから。」

真面目な仕事の話をしつつ甘い顔して俺にライトキスを繰り返しているなんて、携帯の向こうの人は想像すらできないに違いない。  あ、今ちょっと音が鳴っちゃったじゃん!ってことで顔を横に背けたら、顎を掴まれてすぐに戻された。 おいおい、仕事に集中しろよ・・・

「あー、細かいんだよね、あの先生。 じゃあ会社そっちに行く前に顔出してくるから。・・・はい、お疲れさん。」

涼しい顔して電話を切り、俺に覆い被さって仕上げみたいに唇を押し付けてきた。 大丈夫なんかな、この人の会社・・・

「すぐ帰る仕度しますから、いい加減退いて下さい。」

「・・・すぐって? なんで帰るの?」
「だってその”先生”って人のトコに直行するんでしょ?」
「するけど急がないし。 朝っぱらから気難しいオヤジの顔なんか見たくないもの。」
「もうすぐ昼ですよ・・・」

「そっか、じゃあすぐ昼飯用意する。」

いや、そうじゃなくてさー・・・
頬に届くくらいの長めの前髪をサラリとかき上げ、見た人間の体温を簡単に1・2度上げちゃうような甘い笑顔を浮かべながら八神さんは寝室を出て行った。





食欲をそそる香ばしい匂いに釣られてキッチンに行くと、ダイニングテーブルの上には狐色に焼けたトーストとカリカリのベーコンが既に用意されていた。これにオレンジ100%のジュースとスクランブルエッグなんかがつけば典型的なイングリッシュ・ブレックファースト (もう昼だけど) が完成。 モデルルームみたいな八神さん家のお洒落なダイニングキッチンにはホテル仕様のこの朝食が良く似合うなあ (くどいようですがもう昼です) と、ボケーっと八神さんの広い背中を眺めていたら、突然こちらに振り向いたのでちょっと焦った。

「ん?白メシと鮭の方がよくなってきた?」
「・・・いえ、これで充分です。 いつもすみません・・・」

口篭って目を逸らした俺を、八神さんが不思議そうに見ているのがわかる。
毎回思うけど、ボタンぐらい閉めてよ・・・もう。 素肌に洗いざらしの白いコットンシャツを軽く羽織っただけ (ズボンは穿いてますが) っていうのは軽くエロい。 まあ、この人だからエロさ3割増なんだろうけど・・・。
男の裸に見惚れる趣味はないが、貧相な身体つきの俺の視線が羨望込みで全開の前ボタンから覗く八神さんの引き締まった胸元や腹筋に吸い寄せられるのは仕方がない(?)ことだと思う。


寝起き早々無駄な色気を振り撒きながら玉子をスクランブルさせているこの男、八神政一さんは、社員50名ほどを抱えたシステム開発会社の社長さんである。
午前5時にコンビニのバイトを終えた俺、小杉豊が八神さんの部屋に寄り、風呂をもらい、一緒のベッドで・・・寝て、昼ちょっと前に起きて朝食兼昼食を一緒にとって一緒に部屋を出る、なんていう妙な生活リズムが可能になっているのは、 『ウチの会社、フレックス制でコアタイムも無しにしちゃったから♪』 だそうだ。

え? そんなことが聞きたいんじゃないって?
ああ、そうだよね。 なんで俺が恋人でもないのにこの人の隣で目覚めて恋人でもないのに食事まで準備させちゃってるかってことが聞きたいんだよね。 うん。ヘンだよね、どう考えても。


あ、因みに俺と八神さんは まだ そういうカンケイ、、、、、、、、 じゃありませんから。


ああー・・・、これを言うと余計ヘンか・・・。


でもさ、実はなんでこんなことになってんのか俺もよくわかんないんだよ・・・





(続く)
八神がホモかバイかヘテロか・・・まだ決めてない、な感じ。





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