『ネザーランドドワーフ』 04
今回は文字色を変えませんが、ここから八神の回想です。 肉まん、肉まん、とウルサイです。
元々俺はコンビニを頻繁に利用する方ではなかったし、ウチのオフィス近くのコンビニの肉まんは好きではなかったが、肉まんが出回る季節になってすぐに止む終えずそこで買ったことがある。 それをウチの会社の女子社員に見られてヒドイ目に遭った。 イメージが壊れるから止めろだの信じられないだの・・・非難轟々。 あれ以来、昼間のコンビニにはそれまで以上に縁がなくなった。
やはり肉まんは、味・ボリューム共に俺のマンション近くのマイナーコンビニのものが一番良い。
というワケで、客の少ない会社帰りの夜中に時々そのコンビニに寄って肉まんを買っていた。
接待が早めに切り上がったある日、確か午前1時頃だったと思うが・・・、久しぶりにそこに寄ってみると真夜中にも拘わらず客数が多かった。
レジに並んでみて、その理由を悟る。 新入りのバイト君がやたらカワイイ子だったのだ。
どう見ても男だけど。
「いらっしゃいませ!」
タラタラと覇気のない喋り方をする店員が多い中、彼の声は夜中に不似合いなほど凛としていて驚いた。
加えて、俺の視線はその新入り君の笑顔に・・・と言うより、数秒間俺を見つめた彼の瞳に釘付けになった。
つぶらで、黒目がちで、少し潤んだ縋るような瞳。
ちょ・・、チョコたん・・・!?
因みに、『チョコたん』 というのは昔俺の実家で飼っていた、それはそれは愛らしいネザーランドドワーフ(参照) である。
ヤバイ・・・ 頭撫でたい
若干ヘンタイ染みた (自覚アリ?) 欲求をどうにか抑えて俺は店を出た。 そして速攻携帯電話を手にする。
「前野か?俺だ。」
『なんだよ、さっきまで顔つき合わせて呑んでたじゃねえか。 そんなに俺のことが恋しいか?』
「暑苦しい冗談を言うな。 それと、小汚いハゲオヤジのことも思い出させるな。」
『あ〜ハイハイ。 じゃあ、さっさと用件を言ってくださいよ社長さん。』
「俺、明日から時間が長引きそうな接待は出ないから。 お前に任せるよ、前野専務♪」
一瞬の沈黙の後、物凄い怒声が携帯から聞こえてきたが、俺は無視して電話を切った。
ああ、今更言うまでもないと思うが、チョコたんをほうふつとさせたそのカワイイ新入りバイト君が、小杉君である。
俺はその時点で、彼をどうにかしようなどとは全く考えていなかった、 と思うが・・・
久々に、気分が高揚していたのは確かで。
「『小杉君』 ・・・ね。 なんか、楽しくなってきた。」
意味もなく逸る心を抑えて、俺は家路についた。
小杉君を初めて見た日から数週間が経った日の午後。
喫煙室の窓際で、顔を顰めた前野が溜息と共に勢いよく白煙を吐き出した。
「そういうのストーカーって言うんだぞ、八神。」
「毎日店に通ってるだけだろう。
話しかけてるワケでもないのになんでストーカー呼ばわりされなきゃならないんだ。」
とは言ったものの、若干ストーカーじみている自覚はあった。 しかしそれも若干だ。若干。
「それだけで終わらせるつもりねえだろ、お前。
毎晩同じ時刻に現れて同じモン買ってくところがスゲー恐い。 妙な執着を感じる。」
さすがに大学からの長い付き合いだけあって俺のことはよく知っている、と言ってやりたいところだが、スンナリ認めるつもりは毛頭ない。
「感じてないみたいだよ、あの子は。」
「鈍いのか、ソイツ!?」
「早い話がそんな感じだな。」
「え、それじゃ・・・、話しかけなかったらアピれないじゃないか!」
「なんだよお前、アピらせたいのか止めさせたいのかドッチだよ?」
「どっちでもいいんだよ、お前がちゃんと本来の仕事に戻ってくれれば!」
「仕事はちゃんとしている。」
「足りん!」
「過労死するよ。」
「そんなヤワなタマか、お前が。 つーか、オーバーワークだと思うなら
システムの検証にまで付き合って夜中まで時間潰すなんて社長らしくないことすんの止めろ。
ジジイ共の相手がお前の本来の仕事だ。」
苛立たしげにタバコを揉み消しながら前野が言った。 骨太な指の下でタバコが粉々になっている。
前野の小言もわからないではない。 昔ほど営業接待が重要視されない昨今だが、ウチのように若くて小規模な会社が大口の商談の席につくためには何かしらのツテが要るのは事実で、接待は重要な意味を持つ。
「汚ないオヤジと酒を飲むよりあの子の顔を眺めている方が癒されるんだが。」
「だったらサッサと落とせ!」
「下品だな、前野専務。 そんなつもりはないよ。」
軽く流して俺は喫煙室を出た。
実際、落とそうと思えば落とせないことはないだろうし、自分を印象付けるような行動を取っているのだから下心があると思われても仕方がない・・・、が。
結局それから数ヶ月間、接待・接待 言い続ける前野を無視して俺は夜中のコンビニ通いを続けた。
その時は本当に、ナニかを計算していたつもりはなかったのだ。
彼の顔を眺めるとなんとなく心が癒されて、その時間をもう暫く続けたいと思っていただけで。
あの朝、 偶然彼に会うまでは。
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まあよかったよ、 と言って下さる方は

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元々俺はコンビニを頻繁に利用する方ではなかったし、ウチのオフィス近くのコンビニの肉まんは好きではなかったが、肉まんが出回る季節になってすぐに止む終えずそこで買ったことがある。 それをウチの会社の女子社員に見られてヒドイ目に遭った。 イメージが壊れるから止めろだの信じられないだの・・・非難轟々。 あれ以来、昼間のコンビニにはそれまで以上に縁がなくなった。
やはり肉まんは、味・ボリューム共に俺のマンション近くのマイナーコンビニのものが一番良い。
というワケで、客の少ない会社帰りの夜中に時々そのコンビニに寄って肉まんを買っていた。
接待が早めに切り上がったある日、確か午前1時頃だったと思うが・・・、久しぶりにそこに寄ってみると真夜中にも拘わらず客数が多かった。
レジに並んでみて、その理由を悟る。 新入りのバイト君がやたらカワイイ子だったのだ。
どう見ても男だけど。
「いらっしゃいませ!」
タラタラと覇気のない喋り方をする店員が多い中、彼の声は夜中に不似合いなほど凛としていて驚いた。
加えて、俺の視線はその新入り君の笑顔に・・・と言うより、数秒間俺を見つめた彼の瞳に釘付けになった。
つぶらで、黒目がちで、少し潤んだ縋るような瞳。
ちょ・・、チョコたん・・・!?
因みに、『チョコたん』 というのは昔俺の実家で飼っていた、それはそれは愛らしいネザーランドドワーフ(参照) である。
ヤバイ・・・ 頭撫でたい
若干ヘンタイ染みた (自覚アリ?) 欲求をどうにか抑えて俺は店を出た。 そして速攻携帯電話を手にする。
「前野か?俺だ。」
『なんだよ、さっきまで顔つき合わせて呑んでたじゃねえか。 そんなに俺のことが恋しいか?』
「暑苦しい冗談を言うな。 それと、小汚いハゲオヤジのことも思い出させるな。」
『あ〜ハイハイ。 じゃあ、さっさと用件を言ってくださいよ社長さん。』
「俺、明日から時間が長引きそうな接待は出ないから。 お前に任せるよ、前野専務♪」
一瞬の沈黙の後、物凄い怒声が携帯から聞こえてきたが、俺は無視して電話を切った。
ああ、今更言うまでもないと思うが、チョコたんをほうふつとさせたそのカワイイ新入りバイト君が、小杉君である。
俺はその時点で、彼をどうにかしようなどとは全く考えていなかった、 と思うが・・・
久々に、気分が高揚していたのは確かで。
「『小杉君』 ・・・ね。 なんか、楽しくなってきた。」
意味もなく逸る心を抑えて、俺は家路についた。
小杉君を初めて見た日から数週間が経った日の午後。
喫煙室の窓際で、顔を顰めた前野が溜息と共に勢いよく白煙を吐き出した。
「そういうのストーカーって言うんだぞ、八神。」
「毎日店に通ってるだけだろう。
話しかけてるワケでもないのになんでストーカー呼ばわりされなきゃならないんだ。」
とは言ったものの、若干ストーカーじみている自覚はあった。 しかしそれも若干だ。若干。
「それだけで終わらせるつもりねえだろ、お前。
毎晩同じ時刻に現れて同じモン買ってくところがスゲー恐い。 妙な執着を感じる。」
さすがに大学からの長い付き合いだけあって俺のことはよく知っている、と言ってやりたいところだが、スンナリ認めるつもりは毛頭ない。
「感じてないみたいだよ、あの子は。」
「鈍いのか、ソイツ!?」
「早い話がそんな感じだな。」
「え、それじゃ・・・、話しかけなかったらアピれないじゃないか!」
「なんだよお前、アピらせたいのか止めさせたいのかドッチだよ?」
「どっちでもいいんだよ、お前がちゃんと本来の仕事に戻ってくれれば!」
「仕事はちゃんとしている。」
「足りん!」
「過労死するよ。」
「そんなヤワなタマか、お前が。 つーか、オーバーワークだと思うなら
システムの検証にまで付き合って夜中まで時間潰すなんて社長らしくないことすんの止めろ。
ジジイ共の相手がお前の本来の仕事だ。」
苛立たしげにタバコを揉み消しながら前野が言った。 骨太な指の下でタバコが粉々になっている。
前野の小言もわからないではない。 昔ほど営業接待が重要視されない昨今だが、ウチのように若くて小規模な会社が大口の商談の席につくためには何かしらのツテが要るのは事実で、接待は重要な意味を持つ。
「汚ないオヤジと酒を飲むよりあの子の顔を眺めている方が癒されるんだが。」
「だったらサッサと落とせ!」
「下品だな、前野専務。 そんなつもりはないよ。」
軽く流して俺は喫煙室を出た。
実際、落とそうと思えば落とせないことはないだろうし、自分を印象付けるような行動を取っているのだから下心があると思われても仕方がない・・・、が。
結局それから数ヶ月間、接待・接待 言い続ける前野を無視して俺は夜中のコンビニ通いを続けた。
その時は本当に、ナニかを計算していたつもりはなかったのだ。
彼の顔を眺めるとなんとなく心が癒されて、その時間をもう暫く続けたいと思っていただけで。
あの朝、 偶然彼に会うまでは。
(続く)
社長がこんなんで会社は大丈夫なのか!?のツッコミはダメです。
ダラダラとクセの悪い相手と飲まないだけで、通常の接待は出てます。
それと、前野専務が頑張ってるので・・・。
社長がこんなんで会社は大丈夫なのか!?のツッコミはダメです。
ダラダラとクセの悪い相手と飲まないだけで、通常の接待は出てます。
それと、前野専務が頑張ってるので・・・。
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