続・味見してみる? 02



しかし、 『考えてもわからないことは考えないようにする』 ・・・のが俺のモットーだ。

ということで、今日も八神さんと向かい合って遠慮なく美味しいベーコンやらトーストやらを頬張っていたのだが、あんまり彼が溶けそうな甘い顔で (女だったら一瞬でオチるよ、うん。) ノンビリと俺を眺めているからちょっと心配になってしまった。

「平気なんですか、仕事・・・」

微妙に失礼な俺の質問にもニッコリが返ってくる。 あーもう、いちいち微笑まなくていいからっ。

「さっきの”先生”はね、個人的な知り合いなの。 俺が顔出せば気が済む人なんです。」
「それだけじゃなくてー、毎日毎日午後出社でしょ?
 そりゃ社長さんだからのんびり出社もOKなのかもしれないけどさ・・・」
「でも夜中まで一生懸命働いてるじゃない? 俺、夜型なんだよね〜。」

それは言われなくてもわかるよ。 毎晩夜中にウチのコンビニに寄ってるもんね。

「社長さんてさ、接待とかないの? 会社のお偉いさんって接待ばっかりやってんだと思ってた。」
「最近の接待は専務に任せきり。」
「俺、会社のこととか知らないですけど、それヤバくないんすか?」
「さあ?」
「さあって・・・。 大丈夫なんかなー」

「だって接待より大事な用事ができてしまったし。」
「へぇー」
「ここ数ヶ月のことだけど。」
「ふぅーん?」

へー、仕事の接待蹴るほど大事なことを何ヶ月も続けてるのか〜。 社長さんはやっぱり大変だね。
その疲れを肉まんで癒してる(?)んだモンな〜。 うわ、そう考えるとスゴイな、ウチの肉まん。 (違ッ)


「天然・・・というより鈍いんだね、小杉君。」
「なんでですか。 俺関係ないじゃないっすか。」

「はぁ〜・・・、 そろそろ接待漬けに戻ろうかな。」
「?? 戻ればいいんじゃないですか?」
「大丈夫かな?」
「俺に訊かれても・・・」

「あー鈍い。 ・・・というか、実は逸らかされてたとかだったら立ち直れない、俺。」

あさっての方角を向いて、火の点いていないタバコの背をテーブルにトントンしながらブツブツと独り言ちている。
ヘビースモーカーだと言っていた八神さんは、俺の目の前で滅多にタバコを吸わない。 俺が部屋に居る時は換気扇の下で煙を吐き出している。 俺は吸わないけど別に気にしなくてもいいのに。 このヒトのスッとした長い指にタバコって似あうもんなぁ〜・・・と、俺の思考も既にあさっての方に向いていたのだが。
急に真剣な顔をして八神さんが向き直ったから、俺も皿の上のプチ・トマトをコロコロ転がしていたフォークをテーブルに置いて真剣な顔を作ってみた。


「接待漬けに戻ったらもう真夜中のコンビニで小杉君と顔を合わせることは無くなるけど、
 それでも俺のこと覚えていてくれる?」

「はあ?」

おいおい、いくらなんでもそこまでトリ頭じゃないよ、俺・・・。  一気に脱力。


「ヘンな男が毎日通い詰めても気にしたらダメだよ?」
「はあ・・・」

でも、常連さんの顔を覚えてしまうのは仕方ないと思うけどなあ・・・


「親切に肉まんなんかあげちゃダメ。 ましてや味見なんかもってのほか!だよ?」

・・・・・・・・・。

「・・・それ、まんま八神さんだと思うんですけど・・・」

「だからー、俺みたいなのがいてもついてったらダメだって言ってるの。
 あーもう、いい加減気付きなさいよ。」
「へ? 何に??」


あ、眉間に皺が寄ったっ!


「まだダメってことだな・・・」


また俺から視線を外して深い溜息を吐いた。  今のは・・・ちょっと俺もスッとぼけすぎたか。

ご、ゴメン・・・八神さん。 全くナンにも気付いてないワケじゃないんだけどさ・・・





(続く)
天然・激ニブ『受』 がウチのデフォルトだ





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