味見番外 04
おもしろくない。 ホントーにおもしろくない。
”学生ノリ” で楽しそうに話している二人を前に、俺は大人気なく拗ねている。 自分の唇が尖っているのがわかる。 普段、八神さんは俺の態度の変化に敏感なのに、今はなんとなく見てみぬフリっぽい。
俺は、八神さんと北条さんの仲はあまり良くないのだと思っていた。 だってダリオさんの店で北条さんの話が出た時八神さんはとっても意地の悪そうな顔をしていたし、今日だって彼が部屋に来た直後は不機嫌全開だった。
なのにこれは何? 自分から進んで世間話をしている八神さんなんか見たことない。
二人に無視されているワケではないけれど、入り込めない雰囲気は確実に出来上がっている。 こんな居心地の悪さは初めて。
そしてなによりもおもしろくないのは・・・
北条さんがある名前を口にした時、八神さんの顔がフッと優しく綻んだことだ。
『チカ』 って、初めて聞く女性の名前。 当たり前だけど、俺が知らない人の名前。
その名前が出ただけでニヤついてる八神さんなんか、俺は見たくない。
「元気に・・・してるのか?」
「元気ですよ。 ていうかチカの部署にSE派遣してるんでしょうに。」
「俺が直接フロアに顔を出すことはないからな。」
「連絡してやれば喜びますよ、きっと。
ああ、でも今10も下の高校生にハマってるから忙しいかも。」
「チカが!?ちょっと想像できないな。」
「でしょ? 楽しそうですよ〜、若さエキス吸ってるってカンジだし。」
「はは、10も下じゃ吸い甲斐あるだろうな。」
なにソレ。 北条さんと一緒の会社で働いてて、高校生と付き合ってる女性?
八神さん、そういうヒトが好みなワケ?
てか、10も年下の高校生って、ソレ淫行じゃね!? 笑ってる場合じゃなくね!?
「でも八神先輩もチカのこと言えないでしょ? 小杉君、若くない?」
「あー・・・」
一緒にすんじゃねえよ。 つーか、『あー・・・』 ってナンだよ! すっげー気分悪い!
── 八神さんのこの態度でちょっとブチ切れそうになって・・・
「小杉君、いくつ?」
「・・・ハタチです」
「わっかい! いーなー、やっぱり先輩止めて俺にしない?」
── 彼の軽さで拍子抜けさせられかけて・・・
「聡史、そういう冗談この子には禁止。」
── 『この子』っ!? でまたまたブチ切れそうになった。
ハタチ越えて 『この子』 呼ばわりされるのは相当気分が悪い。それは当たり前だが、八神さんに言われるのが特に嫌だ。 八神さんと俺の関係が ”対等” だなんて微塵も思っていないけれど、こんな風に、保護者のようなことを言われるのは堪らなく嫌だ。
「なに、箱入り?」
「そういうことじゃない。 お前に毒されて欲しくないんだよ。 お前は強烈すぎ。」
「ヒッドいこと言うね〜、俺のベースは八神先輩に作って貰ったのに。
悪いことはみーんな先輩から教わったよ?」
「俺の所為にするな。」
「落ち着いたフリしちゃって。 男も女も見境なかったクセに。」
「フリじゃない。 実際落ち着いたの。」
おいおい、『見境なかった』 は肯定かよ!?
前野さんやダリオさんからソレっぽいことは聞いていたけど、やはり本人に肯定されるとダメージが違う。
てゆーか、”男”も!?
取り合えず北条さんが帰るまでは、イライラ、モヤモヤは抑えておこうと思ったが無理だった。
もう黙ってられない。
「八神さん・・・、ゲイじゃないって俺に言わなかったっけ?」
「言ったよ。俺はゲイじゃない。」
「ノーマル寄りのバイだもんね〜。」
「聡史、お前は余計なこと言わなくていい。」
「俺は本当のことしか言ってません。」
「・・・・・・すげーショック」
「小杉君、聡史の言うことは真に受けないで。」
「でもほんとのことなんでしょ!?」
「昔のことだから。」
「・・・信じらんない」
俺同様かなり苛ついたのか (なんで八神さんがイラつくんだよ!)、珍しく俺の目の前でタバコに火を点けた。
(続く)
back|味見してみる? TOP|next
まあよかったよ、 と言ってくださる方は
ポチッと押してやって下さい♪



