味見番外 05
今まで誰が部屋に来たって見送りなどしたことのない八神さんが (俺は毎回して貰ってますけどっ!)、北条さんをマンション下まで見送りに行った。 タバコを買ってくるとか、見え透いた嘘までついて。
大人だし、男なんだし、恋人のしていることをしつこく詮索したり詰ったりするのは情けないし恥ずかしいことだと思う。それが過去のことなら尚更で、できれば俺だってそんなことはしたくない。
ただ、頭ではわかっていても感情がついていかない。 俺は今、不安と怒りと・・・嫉妬、その他諸々の真っ黒な気持ちでいっぱいになっている。 今すぐにでも彼の後を追いかけて問い詰めてしまいたい。
彼が部屋に戻って来るのを待つ数分間が、何時間にも長く感じられた。
「タバコ買いに行ったんじゃなかったの? 見送りだけしてきたの?」
「買い置きがあるのを忘れてた。 まあ、仕事のことで聡史に言いたい事があったし、丁度よかったよ。」
手ぶらで部屋に戻ってきた八神さんへの厭味だってことぐらいわかってるだろうに、彼は悪びれた風もなく白々と嘘をつく。 『仕事』 のカードを出せば俺が何も言えなくなると思ってるし。
「仲・・・いいんだね、北条さんと。」
「良くも悪くもないよ。
・・・ねえ、さっきから何を怒ってるの? まさか俺と聡史のことを疑ってるとか?」
「別に疑ってません!」
「じゃあ何を怒ってるの」
ソファーに座って俯く俺の傍に屈んで顔を覗き込んでくる。 肩に置こうとした手を、俺は露骨に避けた。
「怒ってません」
「嘘ばっかり」
「苛ついてるだけです」
「だからどうして?」
八神さんと北条さんのことを疑ってなんかいない。疑ってはいないけど、二人の間に特別な雰囲気があってオモシロくなかったなんて言いたくない。
俺の前で俺の知らないことや知らない人のことを楽しそうに話されてたのがムカついた、なんて言いたくない。
でも・・・
「チカって人・・・ 八神さんとどういう関係?」
「俺との関係?? んー、友人・・・なのかな。 でも俺のというよりは聡史の、だな。
チカは聡史の元彼だから。」
「元彼・・・って、え、チカって男なの!?」
「そう。 佐伯宣親(のりちか) で ”チカ”。 聡史の会社の同期で元彼。
学生の頃は女と遊んでたこともあったけど、元々聡史はゲイなんだよ。」
予想外の事実で一瞬毒気を抜かれかけたが、八神さんが薄く笑っているのを見てまた頭に血が上った。
その人が男だろうが女だろうがそんなことは関係ない。 俺が確かめたいのはそんなことじゃない。
「信じらんない・・・」
「って言われてもね、アイツがゲイなのは本当だし」
「そのことじゃないよっ!」
「そのチカって人・・・」
「ん?」
「八神さんとナンかあったでしょ・・・」
八神さんはじっと俺の顔を見ているだけで何も言わなかった。
つまり肯定ってことなんだろう。 そのつもりで俺は質問を続けた。
「それは北条さんとチカさんて人が付き合う前?付き合ってる時?別れた後?」
「最中」
「サイアク・・・」
(続く)
まあ、過去のコトですしぃ・・・
まあ、過去のコトですしぃ・・・
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