続・味見してみる? 03
八神さんと一緒に部屋を出て、マンション近くの交差点で分かれて直ぐに携帯が鳴った。 ディスプレイを確認すると、幼稚園からの幼馴染の田中だった。 そこで今更ながらに気付いたのだが・・・、俺は八神さんの携番もメアドも知らない。勿論彼も俺のを知らない。 最近じゃメアド交換するのが初対面の挨拶みたいな風潮があるのに、彼は訊いてこないし俺も訊かない。 八神さん相手だと何故かそれが必要だと感じないのだ。
「どーしたー?」
『豊、今ドコ? 外?』
「んー、今から部屋に帰るとこ。」
『もしかして、今まで例の男前シャチョーの部屋にいた??』
「んー。」
『なあ、今からお前の部屋行っていい? ちょっと寝かして欲しー。』
「いーよー。」
田中はこの辺りにある大学の学生で、講義と講義の間が中途半端に空いたりすると俺の部屋に昼寝をしにくる。 ま、大抵くだらない話ばっかりしていて、ちゃんと眠っていったことなんてないけど。 どうせ今日もそうなるだろう。突っ込まれる話題は見当がついている。当然八神さんとのことだ。
「で? とうとう喰われたか?」
ほーらな・・・
玄関を開けて俺の顔を見るなり予想通りの質問を投げてきた。 俺が男の部屋に連日のように通い、且つ昼まで一緒に過ごしていることに対して興味半分、心配半分といったところだ。
「なワケねーだろ」
「なんで?? 絶対下心があるに決まってるのに、なんでナンにもしてこないんだ?」
「俺に訊くなよ。 つーか、八神さんゲイじゃないって言ってたぞ?」
「そんなの猫被ってるに決まってんだろ?? どう考えたってフツーじゃねえよ、絶対怪しい!」
「うーん・・・」
「ソイツが直接手を出してこなくてもさ、油断させておいて気を許したところで弱味なんか握られちゃって
どこかヘンなトコに売られちゃうかもしれないぞ!?」
「う゛〜〜ん・・・」
それ、ヘンなドラマの見すぎじゃないかなぁ・・・
行きつけのコンビニ店員を部屋に泊めてメシ食わせてって確かにワケわかんないことする人だけど、危ない人ではないのにな。
キスもするけどそこまで濃ゆ〜いモンじゃないしな・・・
ヘンなことしてこないしな。 そもそも俺の身体に触ろうとはしないしな・・・
そんなに怪しい人じゃないんだけど・・・?
実は、八神さん家に通うようになって何日目かに、俺はそのものズバリな質問をしたことがある。
「八神さんって、ホモなんですか?」
「ははは。 この期に及んでそこまで直接的に確認されるとは思わなかったよ。」
ということはやっぱりホモなんだな・・・
「違うよ。」
「は?」
「ゲイじゃないよ、俺。」
「でも男の俺に・・・」
「君はゲイ? 男の俺とキスしてるけど、ゲイ?」
「違います・・・」
第一、キスは八神さんが勝手にしてくるのであって、俺がして欲しいと言っているワケじゃない。それでゲイ扱いは些か理不尽だ。 拒まないところがオカシイと突っ込まれると何も言い返せないけど。
「ねえ、小杉君は今の今まで俺のことゲイだと思ってたってことだよね?
それでも俺の部屋についてきて、尚且つ俺の傍で寛いでるのって、俺とは 『OK』 ってことなの?
なにが起こっても覚悟の上だということ?」
「そういうワケでは・・・」
ないけど、じゃあどういう意味だと訊かれてもやっぱり上手く説明できない。 強いて言うなら 『居心地が良いから』? それと、八神さんがキス以上のことをしてくる気配もないから警戒薄れちゃった、みたいな・・・
自分でもこんなのヘンだな〜・・・とは思ってるんだけどさ。
「どうしてよく知りもしない俺を部屋に連れて来たんですか?」
「話したかったからって言ったでしょ。」
「それで部屋に泊まらせたりするの? 俺が極悪犯罪者だったらどうすんですか?」
「それはありえないな。 人の目を見てちゃんと会話ができる小杉君が極悪人のはずがない。」
褒められたんだろうけど、小学校の先生みたいなホメ言葉は照れるを通り越してちょっとサムい。
「じゃあさ・・・、八神さん俺にキスするでしょ? ゲイじゃないんなら、なんで俺にキスすんの??」
でも 『なんで嫌がらないの?』 は訊かないでくれ、と勝手なことを考えていた俺の思考は、八神さんの不可思議な言葉でフリーズした。
「くちびる」
「?」
「美味しそうなんだ、小杉君の唇。 言われたことない?」
「・・・・・・ある、かも」
『かも』 ・・・ じゃなくて実は何度もある。老若男女問わず、仲良くなった人間は皆俺の唇を 『ぷっくりと柔らかそうで艶やかでとっても美味しそう♪』 と表現してくれる。 全っっ然嬉しくないけど。
「でしょー?」
それがノーマルが男にキスする真っ当な理由になるかどうかは疑問だが、これで八神さんのキスの仕方の理由はわかった。 この人のキスは、愛情確認とか性的興奮を煽る為というよりは、”唇で遊んでる”に近い。 たまーに舌で口内を撫でられたりするけど、基本、俺の唇を軽く食んだり緩く吸ったり軽く引っ張ったりするだけだ。
「だからって 『味見』 とかすんのはナシだと思うんですけど、フツー。」
「でももう済ませちゃったしね。今更だよね。」
「ナマモノ (俺か・・・!?) は 『返品不可』 なんですよ〜?」 (←精一杯のジョーク・・・のつもり)
「しないよ。ちゃんと最後まで責任持って戴きます。」
う゛〜ん・・・、マジ顔で冗談返すの止めて欲しいなぁ・・・
「そういうセクハラ・・・、もう止めません?」
「セクハラか。 そうだよね、君が言われて嫌ならセクハラになるんだよね。 ・・・─ で、嫌なの?」
「ああー・・・、もうどうでもいいです。」
「どうでもいいって・・・ すぐ流すんだから、君は」
だって面倒くさいし・・・
ちょっと恐いじゃん。 流さなかったらどうなるんだろうって考えるのは・・・
「ユーターカ! おーーい豊っ! 戻って来ーーい!!」
目の前で田中の手がヒラヒラと舞っている。
おっといけない、危うく遠いところに行ってしまうところだった。
「とにかくさ、お前もうちょっと警戒した方がいいって。」
『マジで気を付けろよ?』 と、何度も念を押して田中は帰って行ったが・・・・・・
聞く気がないのか聞きたくないのか、翌日も俺は八神さんの部屋で昼まで寛いでいた。
「トモダチが言ってたんですけどー、俺、ドコかに売られちゃうんですか?」
コーヒーカップを片手に持ったまま集中していた新聞から勢いよく顔を上げて、八神さんが珍しく不愉快を露にした。
「俺は女衒じゃありません! そんな犯罪者みたいなことするワケないでしょう!?」
「ですよねー。 純粋に俺と話がしたいだけって言ってましたもんね。 ヘンなことしませんもんね。」
「・・・・・・それはそれですごい牽制だな」
うーん、別にそういうワケじゃないけど。
あ〜もう、ホントこういうの苦手。
どうせ曖昧な感じで始まったんだからさ、曖昧な状態のまま置いておく ──・・・ とか都合のいいようにはいかないもんだろうか・・・?
(続く)
いくワケがないだろう(怒)
ああ・・・また余計な登場人物増やしちゃったよ・・・
(でも彼は今回のみの子)
いくワケがないだろう(怒)
ああ・・・また余計な登場人物増やしちゃったよ・・・
(でも彼は今回のみの子)
※次回から暫く回想が続きます。
発作的に書き始めて綱渡り的に進めてるものですから読み難さ満載だと思いますが、お付き合い頂ければ嬉しいです 《染》
発作的に書き始めて綱渡り的に進めてるものですから読み難さ満載だと思いますが、お付き合い頂ければ嬉しいです 《染》
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